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» 2019年06月26日 11時00分 公開

2019年版中小企業白書を読み解く(1):深刻化する中小製造業の人手不足――労働力人口の減少と大企業志向の高まり (1/6)

中小企業の現状を示す「2019年版中小企業白書」が公開された。本連載では、中小製造業に求められる労働生産性向上をテーマとし、中小製造業の人手不足や世代交代などの現状、デジタル化やグローバル化などの外的状況などを踏まえて、同白書の内容を4回に分けて紹介する。第1回は、中小企業の人手不足の現状を明らかにするとともに、人手不足の状況下での雇用の在り方について解説する。

[長島清香,MONOist]

 経済産業省 中小企業庁は2019年4月に「2019年版 中小企業白書」(以下、中小企業白書2019)」を公表した。「中小企業白書」は、中小企業基本法に基づく年次報告で、2019年版で56回目となる。本稿では中小企業白書2019を元に、中小製造業を含めた中小企業における人手不足や、そのような状況下で労働生産性を向上させるための「デジタル化」「グローバル化」といった中小企業に求められる新たな取り組み、また中小企業における世代交代の実態などについて4回に分けて考察する。

 第1回の「深刻化する中小製造業の人手不足」では、中小企業の人手不足の現状を明らかにするとともに、人手不足の状況下での雇用の在り方について掘り下げる。

 なお、この報告の中で「中小企業」とは、中小企業基本法第2条第1項の規定に基づく「中小企業者」をいう。具体的に中小企業基本法上の中小企業の定義としては、製造業においては「資本金が3億円以下であること」「常時雇用する従業員が300人以下であること」のいずれかの条件を満たす企業を指す(ただし、ゴム製品製造業については資本金が3億円以下、または常時雇用する従業員が900人以下)。また、常時雇用する従業員が20人以下の場合は「小規模企業者」に区分される。

 2016年の調査によれば、中小企業数は日本の全企業の99.7%を占めており、中小企業の従業者は全体の約70%を占めている。

photo 図1:全企業の中で中小企業が占める割合(クリックで拡大)出典:中小企業白書2019

中小企業の業況は横ばい

 日本では、少子高齢化を背景として人口が減少傾向にあることに加え、生産年齢人口が減少している。これにより、中小製造業を含めた中小企業全体で人手不足が深刻になりつつある。中小製造業における人手不足の現状はどのようなものなのだろうか。

 まず、中小企業の業況を見る前に日本経済全体の動向について確認したい。実質GDP(国内総生産)成長率の推移をみると、2018年の年間成長率は0.8%となり、2017年を下回った(図2)。その要因として2018年7月の豪雨など自然災害による押し下げが挙げられる。ただ、2018年の第4四半期には個人消費と設備投資が増加し、民需が成長を支えた形となった。一方で、情報関連財を中心とした中国向けの輸出の弱含みもあり、外需寄与度がマイナスとなっている。

photo 図2:実質GDP成長率の推移(クリックで拡大)出典:中小企業白書2019

 中小企業の業況の動きについて、調査対象の8割が小規模企業である中小企業庁・中小企業基盤整備機構の「中小企業景況調査」(以下、景況調査)を見てみると、中小企業の業況判断DI(前期に比べて業況が「好転」と答えた企業の割合から「悪化」と答えた企業の割合を引いたもの)は、リーマンショック直後に大きく落ち込み、東日本大震災や消費税率引上げの影響で落ち込みはあるものの、その後は総じて緩やかな回復基調にあることが分かる(図3)。2018年の動きについては相次ぐ災害の影響もあり、第3四半期に一度落ち込んでいるものの、その後は回復基調に戻っている。

photo 図3:企業規模別業況判断DIの推移(クリックで拡大)出典:中小企業白書2019
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