車載イーサネットのフィジカルレイヤーはどのようになっているのかはじめての車載イーサネット(2)(1/4 ページ)

インターネット経由で誰とでもつながる時代。個人が持つ端末はワイヤレス接続が大半を占めていますが、オフィスなどではいまだに有線によるローカルエリアネットワーク(LAN)が使われています。そのLANの基盤技術の1つとして広く使われているイーサネット(およびTCP/IP)が、次世代の車載ネットワーク技術として注目を浴びています。本稿では注目される背景、役割や規格動向から、関連するプロトコルの概要まで、複数回にわたり幅広く解説していきます。

» 2019年08月05日 06時00分 公開

 前回はイーサネットが車載ネットワーク技術として注目されている背景や、その期待される役割、イーサネット(およびTCP/IP)とOSI参照モデルの関係やPDUの構造を紹介しました。今回はOSI参照モデルの1番下、イーサネットにおけるフィジカルレイヤーについてお話していきます。

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車載ネットワークにおけるトポロジー

 従来の車載ネットワークプロトコルとイーサネット(およびTCP/IP)が、プロトコルそのもの以外にも、さまざまな面で異なりそうだということは、皆さんもすでに気付かれていると思います。そのうちの1つにネットワークトポロジーの違いというものがあります。ネットワークトポロジーは、誤解を恐れずに言えば、ネットワークのつながり方の形です。つまり、通信をする主体であるそれぞれのノード(車載ではECU)が通信媒体を通じてどのようにつながっているかを示すものです。

 従来の車載ネットワークプロトコルにおける代表的なトポロジーとして、Bus型、Ring型、Active Star型などが挙げられます。それぞれ特徴があり形も違いますが、「ノード同士が通信媒体を介して直接つながっている」という1つの共通点があります。これはネットワーク上のどこか1点を計測することで、そのネットワーク上のやりとりが全て把握できるということを意味しています。

 一方、現在のイーサネットでは、図2のようにスイッチを経由したつながり方(スイッチ型トポロジー)が主流になっています。これは図1のトポロジーとは異なり、原則1対1でつながっているため、どこか1点を見ただけでは、全てを把握することはできません。また通信媒体上の信号波形からだけでは通信内容を把握することは非常に難しくなっています(理由は後述します)。つまり、従来とは計測の仕方が異なってくるという点を記憶に留めておいていただければと思います。

図1 車載ネットワークプロトコルの代表的なトポロジー(左)
図2 スイッチ型トポロジー(複数接続を持つものはここではスイッチと考えます)(右)
(クリックして拡大) 出典:ベクター

車載イーサネットにおけるフィジカルレイヤー

 さて、ノード同士をつないでいるフィジカルレイヤーですが、ご存じの通り、家庭やオフィスのLANで使われているものには複数あります。同様に「車載(クルマで使われている)」という観点でも複数あり、大きくは「クルマの中で使われるもの」と「クルマと外をつなぐために使われるもの」に分けられます。

  • クルマの中で使われるもの
    • 100BASE-T1、1000BASE-T1(車内通信)
  • クルマと外をつなぐために使われるもの
    • 100BASE-TX、1000BASE-T(診断通信)
    • ISO 15118(充電通信)

 双方ともクルマにおける通信の新しいユースケースに対応するために導入されたものではありますが、前者の方が前回お話した車載ネットワークそのものに対する新たな要求に応えるためのものである、という点が色濃く表れていますので、ここではそちらに重きを置いて説明していきます。

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