2025年の車載用リチウムイオン電池の市場規模、1TWhか、362GWhか電気自動車

矢野経済研究所は2019年10月21日、車載用リチウムイオン電池の市場調査の結果を発表した。

» 2019年10月23日 06時00分 公開
[齊藤由希MONOist]

 矢野経済研究所は2019年10月21日、車載用リチウムイオン電池の市場調査の結果を発表した。

 電動車の需要と政策のそれぞれを基に市場規模の予測を行い、異なる成長率を示した。政策ベースでは市場規模が2025年に2022年比49.7%増の1065GWh(約1TWh)、2030年には2025年比で87.4%増の1995GWh(約1.9TWh)に拡大するが、需要ベースでは2025年に362GWh、2030年に503GWhという成長にとどまる。この予測の背景には、使い勝手や車両価格など消費者ニーズを踏まえると電動車の本格的な普及が進むか不透明である点や、電気自動車(EV)の車両価格の高さや走行距離の短さ、充電インフラの課題が多く、解決まで長い期間を要するとの見通しがある。

需要ベースでの車載用リチウムイオン電池の市場見通し(クリックして拡大) 出典:矢野経済研究所
政策ベースでの市場見通し(クリックして拡大) 出典:矢野経済研究所

 2018年の車載用リチウムイオン電池の市場規模は、前年比92.4%増の110.5GWhに拡大した。電動車の最大市場である中国では、補助金縮小の影響を受けて、商用車タイプのプラグインハイブリッド車(PHEV)やEVの需要縮小がみられたものの、2018年下期から乗用車タイプの電動車の需要が回復した。欧州では、ディーゼルエンジンに対する逆風を受けてハイブリッド車(HEV)の販売が伸びており、2021年にはCO2排出量を95g/kmとする規制に備えて主要自動車メーカーがEVやPHEVの投入を予定している。

 これまでEVやPHEVは普及政策を受けて販売を増やしてきたが、オランダや英国、デンマーク、中国などで購入補助金や税制優遇といった支援策が見直されている。しかし、一定比率の新エネルギー車の生産と販売を義務付ける中国のNEV(New Energy Vehicle)制度への対応や、欧州のCO2規制が電動車市場の成長を後押しするとしている。

 中国では、NEV制度だけでなく、企業平均燃費規制に満たない自動車メーカーに対する罰則を設けている。自動車メーカーは乗用車の生産、輸入台数の増加に比例して新エネルギー車の台数を増やす必要がある。欧州では、乗用車のCO2排出量を2030年に企業平均で2021年目標からさらに37.5%削減する規制案が決まった。この規制への対応はクリーンディーゼルやHEV、PHEVだけでは難しく、EVの販売比率を大幅に引き上げる必要があるとしている。

 日本でも、欧州と同等レベルの燃費基準値を導入し、2030年度までに新型車の燃費を2016年度の実績値から32%改善することを義務付けた。米国では自動車の燃費規制を緩和する動きがみられるものの、カリフォルニア州のZEV規制に対応することが求められている。インドやASEANなどでも排ガス規制が厳格化される傾向があり、電動車の普及に向けた支援や優遇政策を推進している。

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