特集:IoTがもたらす製造業の革新〜進化する製品、サービス、工場のかたち〜
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» 2020年03月30日 11時00分 公開

MONOist IoT Forum 大阪2020(後編):住友ゴムがタイヤ製造で目指す工場データの「集中コントロールセンタ構想」 (2/5)

[三島一孝,MONOist]

2つのパターンでデータ分析を行う

 こうして進められた、住友ゴム工業の具体的な工場データ活用の仕組みと成果については、住友ゴム工業 製造IoT推進室の金子秀一氏が紹介した。

 住友ゴム工業が取り組んだのは、材料品質のばらつきによる製品のばらつきを抑えるということだ。AI(人工知能)とBI(Business Intelligence)の組み合わせにより効率的にデータ分析までを行える体制を作った点が特徴だ。

 まず、データの収集基盤については、PTCが展開する「Kepware」と「ThingWorx」を活用。工場内の多様な機器を簡単に接続して情報収集し、リアルタイムに閲覧できるようにした。金子氏は「工場内にはさまざまな種類の規格が混在している。こうした違いを吸収し、上位層で統合されたデータとすることが必要になる。共通基盤を確立できたことで、データの収集時間を従来に比べて大幅に削減できた。さらに、他工場や他のシステムとも連携しやすい」と語っている。

photo 住友ゴム工業 製造IoT推進室 金子秀一氏

 具体的なデータ分析は、2つのアプローチで実施した。1つ目のアプローチは、データ可視化を行い注目すべき項目を抽出し、その後機械学習により項目の関係性を見つけ、要因を解析するという方法だ。もう1つのアプローチは、まず機械学習で全項目を対象として分析を行い、その結果を見て、影響因子の深堀りを行うものだ。

 「従来は単一工程と品質の分析を、一つ一つ確認する必要があったため、影響度の高い因子を見つけるのに大きな手間がかかった。しかし、機械学習を使ったデータ分析を行うことで全工程をまとめて対象として分析でき、負担を大幅に軽減できる。これらを組み合わせることで効率的なデータ分析が行える」と金子氏は述べている。

「AIではなくBIでもやれることはたくさんある」

 また、単純な可視化では、タブローソフトウェアのBIツール「Tableau」を活用し、品質改善を目指した。「Tableau」については、セルフBIツールとされ、現場でも使いやすいことが特徴だ。住友ゴム工業ではこの「Tableau」の現場での活動を推進するために、推進チームを結成し、データ活用をストーリーとして訴えた「Tableau推進活動」なども実施している。「改善活動を行うのは現場だ。データ活用も現場が分かるような形で進める必要がある。現場の理解を得るのに大切なのはストーリーにして伝えることだ」と金子氏はポイントについて語っている。

 これらの取り組みを推進しつつ将来的には、工程から集まるデータを常に分析するAIモデルを構築し、問題発生をタイムリーに把握し対応できる仕組みを構築するという。また、「集中コントロールセンタ構想」を具体的に進め、2025年までにグローバルの各工場を結ぶ体制を作る計画も示している。

 ここまで製造でIoT活用を推進してきた得られたこととして金子氏は「AIとBIを組み合わせて活用することで、効率的にデータを活用できるようになった。AIへの期待度は当然高いが、製造現場ではBIのみでもできることはまだまだ多い。必要性に応じてAIとBIそれぞれの強みを生かしてデータ活用を進めることが重要である。また、実際にデータを活用する際に大変なのが、データの収集と加工である。どういうデータが重要でどういう粒度で取らなければならないかは、現場でしか判断できないため、そこにリソースを使う体制を作ることが重要だ」と語っている。

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