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» 2020年05月25日 06時00分 公開

いまさら聞けないクルマのあの話(6):商用車メーカーは、なぜ積極的にライバルと組めるのか (1/3)

日野自動車、いすゞ自動車、三菱ふそうトラック・バス、UDトラックスの日系メーカー4社を中心に、商用車メーカーの現状と事業戦略を考察します。

[友野仙太郎,MONOist]

 自動車業界が「100年に1度の大変革期にある」といわれる中、商用車ビジネスも大きな転換期を迎えています。慢性的なドライバー不足やeコマースなどによる物流改革に加えて、安全性の向上や環境問題など、取り巻く事業環境は乗用車以上に厳しさを増しているといっても過言ではありません。これを受けて国内外の商用車メーカーによる提携が相次いでおり、プレーヤーの構図も大きく変わりつつあります。

 日野自動車やいすゞ自動車など日系メーカーを中心に、商用車メーカーの現状と事業戦略を考察します。

もはや単独では生き残れない……

 2018年4月、自動車業界に衝撃が走りました。トヨタ自動車傘下の日野と、フォルクスワーゲン(VW)グループの商用車部門(現トレイトン)が業務提携を発表したのです。トヨタとVWといえば、世界販売で首位を争うライバル同士。その商用車部門が手を結ぶという事態に、商用車ビジネスを取り巻く環境の厳しさが表れています。

 なぜ、グローバルの2大巨頭でもあるトヨタグループとVWグループの商用車部門が提携する必要があるのでしょうか。

ライバルであるトヨタとVWの商用車部門の提携はトラックビジネスの厳しさを物語る(クリックして拡大)

 まず、商用車メーカーは、乗用車と比べて販売台数が圧倒的に少なく、売上高などの事業規模も相対的に小さくなります。しかし、乗用車同様にトラックにも安全性や環境性能が求められ、特に自動運転や電動化といった次世代技術の開発コストは膨大になるため、事業規模の小さな商用車メーカーにとっては大きな負担となります。これはトヨタと提携するSUBARU(スバル)やスズキと同じ構図といえます。

 一方で、乗用車と商用車を比べると、自動運転も電動化も求められる技術が異なります。このため、巨額の研究開発費用を投資するトヨタグループに属する日野でも、独自の技術開発が必要となります。これが、たとえライバルグループであっても、技術の共有が可能な商用車メーカー同士が手を組む大きな理由といえます。海外を見ても、グローバル商用車市場で首位を争うダイムラートラックとボルボグループが発表した燃料電池(FC)トラックの量産に向けた合弁会社の設立などは、トラックにおける先進技術開発の難しさを示す例といえます。

 また、商用車ビジネスの大きな特徴として、乗用車以上に地域色が強いことが挙げられます。トラックは用途や地域によってニーズが細分化されており、販売拡大にはニーズに最適な車両を提供できることが不可欠となります。このため伝統的に欧州地域は欧州メーカー、北米地域は米国メーカー、東南アジア地域は日系メーカーと得意とする市場がわかれています。車両タイプに対するニーズも、欧州は大型車、北米はボンネットトラック、東南アジアは中・小型車が中心のため、得意とする車両タイプもメーカーごとに異なります。これらの理由から、ダイムラートラックは三菱ふそうトラック・バスを、ボルボグループはUDトラックスをそれぞれ傘下に収めることで、苦手とする市場や車両タイプを補完しています。

三菱ふそうはダイムラーグループで電動化技術の中核を担う。写真は小型EVトラック「eキャンター」(クリックして拡大) 出典:三菱ふそうトラック・バス

 中国メーカーなどを除いた商用車のグローバルメーカーの勢力図を見ると、最大手がダイムラートラックで、グループには三菱ふそうのほか米国のフレイトライナーなどが属しています。その次がボルボグループで、ルノートラックスやUDなどを傘下に抱えています。3番手がトレイトンで、ドイツのMANやスウェーデンのスカニアなどとグループを形成するほか、2018年に日野とも業務提携しました。

 日系メーカーで唯一単独だったいすゞも、2019年12月にボルボグループとの業務提携に合意。これにより全ての日系メーカーが欧州メーカーを中心とした商用車グループと提携する格好となりました。

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