特集:IoTがもたらす製造業の革新〜進化する製品、サービス、工場のかたち〜

アフターコロナを生き抜く製造業が“ニューノーマル”で求められるものとはサブスクで稼ぐ製造業のソフトウェア新時代(5)(1/3 ページ)

サブスクリプションに代表される、ソフトウェアビジネスによる収益化を製造業で実現するためのノウハウを紹介する本連載。第5回は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大により大きく変容した社会情勢を指す“ニューノーマル”の中で、製造業に求められるものについて論じる。

» 2020年06月29日 10時00分 公開

 世界中で新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大がなかなか収束を見通せない状況の中、さまざまな企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)が急速に進みつつある。新しいワークスタイルが提唱されていく中で、製造業のビジネスも改めて変革が叫ばれている。

 このCOVID-19がわれわれにもたらしたパラダイムシフトは、新しい事業機会を作り出すための原動力となっている。多くの企業は将来のビジネスの在り方を見つめ、アフターコロナをどのように生き抜いていくかを経営的に判断する岐路に差し掛かっている。今まさにわれわれが経験した、予想できない脅威に対してどのように対策を打つべきか、未来を担う決断力が問われている。

 そこで今回は、このコロナ禍において、製造業の収益基盤として今後重要な柱となるソフトウェアビジネスを展開する上で、DXを確立して運用業務を効率化させることがどれだけ重要なのか、さらにパーソナライゼーション実現とカスタマーエクスペリエンスを向上させることに伴うコスト増に対して、どのように対処すべきかについて考えてみたい。

⇒連載「サブスクで稼ぐ製造業のソフトウェア新時代」バックナンバー

コロナ禍によるサプライチェーンの破綻で製造業が学んだこと

 世界中の製造業はサプライチェーンの破綻によって顧客に製品やサービスを提供できなくなり、納入の遅延や需要の停滞による売上の減少だけではなく、当面のビジネスチャンスを失う結果となった。強力なサプライチェーンに強みを持つ日系製造業においても、世界同時多発的に発生したコロナショックのダメージを免れることはできなかった。

イメージ ※図はイメージです

 ところが、製造業だけでなくソフトウェアビジネスでも同様の状況に陥っている企業が少なくないことに驚いている。コロナショックでリモートワークが推奨される中、デジタル化に後れを取る企業のソフトウェアビジネスには大きな爪痕を残した。ソフトウェアやライセンスの物理的なデリバリーオペレーションやフィールドメンテナンスなど、ビジネスを取り巻く環境がデジタル化されていないために、新たなワークスタイルの変化に柔軟に対応できない企業が悲鳴を上げる結果となった。

 「顧客が必要とする製品やサービスを、必要なときに届けることができない」といった事態が、物理的な制限のあるハードウェアビジネスで起こることは仕方がないにしても、本来影響が避けられるはずのソフトウェアビジネスで同じような顛末(てんまつ)に陥ってはならない。デジタル技術を活用して生産性を落とさず業務効率を高めることの重要性が、コロナショックによって改めて明らかになり、どの企業にとっても共通の課題となった。

サブスクリプションはアフターコロナ時代の救世主となる

 リーマンショックを超える衝撃とも言われ、2019年度の製造業各社の業績が軒並み減収減益となっただけではなく、2020年度の業績予想さえも見通せない企業が目立った。企業の事業継続性そのものが問われている中で、アフターコロナ時代における生き残り策を講じる必要性に迫られている。

 そんな中、サブスクリプションはこうしたコロナショックの影響を受けにくいビジネスモデルとして改めて脚光を浴びている。音響・映像機器分野の世界的企業であるソニーは、COVID-19の影響で主力のエレクトロニクス事業が7割もの減益となったが、ソニー全体の営業利益は3割減にとどまっているという。売り切り型からサブスクリプションに移行したゲームや音楽などのコンテンツビジネスがソニーの収益を安定させる構図となったためだ。

 ゲームや音楽などのコンテンツビジネスと同様に、ソフトウェアのサブスクリプション化は多くの製造業のキラーコンテンツとなるだろう。ソフトウェアビジネスのサブスクリプションはCOVID-19のような想定外の事態に陥ったとしても、多くの企業の業績を支える救世主となる可能性は十分に秘めている。

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