「つながるクルマ」が変えるモビリティの未来像
特集
» 2020年08月31日 06時00分 公開

モビリティサービス:デジタルディーラーやダイナミックマップがカギ、“ポストコロナ”の勝ち残り (1/3)

人とモノの移動、MaaS(Mobility-as-a-Service、自動車などの移動手段をサービスとして利用すること)をキーワードに、各国のモビリティエキスパートとともにCOVID-19(新型コロナウイルス感染症)の影響と見通しを解説した第1回、第2回に続き、今回は「自動車業界編」として、大変革×COVID-19を勝ち残るための取り組みにフォーカスし、ポストCOVID-19時代のトレンド「Beyond CASE」を解説した。

[長町基,MONOist]

 EYアドバイザリー・アンド・コンサルティングは2020年8月18日、『EY Mobility Insight 3rd クライシスの今だからこそ、未来の移動を考える 自動車業界関係者のためのポストCOVID-19の勝ち残り戦略「Beyond CASE」とは?』をテーマとしたオンラインセミナーを開催した。

 人とモノの移動、MaaS(Mobility-as-a-Service、自動車などの移動手段をサービスとして利用すること)をキーワードに、各国のモビリティエキスパートとともにCOVID-19(新型コロナウイルス感染症)の影響と見通しを解説した第1回、第2回に続き、今回は「自動車業界編」として、大変革×COVID-19を勝ち残るための取り組みにフォーカスし、ポストCOVID-19時代のトレンド「Beyond CASE」を解説した。

 オープニングセッションでは、EYアドバイザリー・アンド・コンサルティングで商用車&モビリティリーダーを務める早瀬慶氏がモビリティ業界の大変革とCOVID-19を勝ち残るために必要な取り組みを語った。

 自動車業界ではCOVID-19の発生以前から、「100年に1度の変革」が起き始めており、早瀬氏は「COVID-19は予想外の事態が起きたというよりも、あらゆるものを加速させていく」という影響があるとみている。COVID-19終息後もこうした流れが続くものと予想され、今後の変化を踏まえて自動車業界は、CASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)の枠を超えたトレンド(Beyond CASE)を捉えることが勝ち残る必須条件となることを指摘した。

COVID-19が変化を加速させる(クリックして拡大) 出典:EYアドバイザリー・アンド・コンサルティング

都市封鎖の中で販売を支えた「デジタルディーラー」、過去には失敗例も

 早瀬氏は、「本格化するデジタルディーラー」と題して、COVID-19で加速されるものの1つに挙げられるデジタルディーラー(バーチャルディーラー、DD)について紹介した。2019年の時点で自動車業界において進むDXのトレンドの1つとして売り方改革が取り上げられており、既にコロナ禍で欧米市場ではデジタルディーラーに取り組んでいるディーラーほど自動車の販売実績を伸ばしているという実態がある。

 世界で最もデジタルディーラーが普及している地域の1つに中国市場が挙げられるが、この拡大の背景にある5つの要因をまとめた。地政学的因子としては国土が広大であり、車両販売網整備より先にEC市場が形成されたことが挙げられる。政策的には、新しいテクノロジーや視点を持つ企業などが他分野から参入しやすいように国が規制を緩和したことがある。企業側としては、EC形態で人件費や店舗維持費などの多くのコスト削減が可能となり、店舗販売型に対して優位な価格設定ができることなどがある。

デジタルディーラーは加速される変化の1つ(クリックして拡大) 出典:EYアドバイザリー・アンド・コンサルティング

 「既に中国では乗用車はもちろん商用車もインターネットで買う時代が到来している」(早瀬氏)とその普及のスピードは著しい。米国でも10年近く前に中古車販売からスタートしたデジタルディーラーがあったが、高額な給与やオフィス費用などの負担増、ビジネスの急拡大などによりビジネスマネジメントが破綻した。あるディーラーは、中古車販売で品質を担保するため100人以上の車両査定プロフェッショナルを雇用し、1台当たり2時間かけ査定を実施(240項目)するなどの丁寧な査定が高い評価を受けた。しかし、その分顧客獲得コストが高止まりし、コスト構造を改革できずにデジタルディーラーから撤退することとなった。

 「ここでのポイントは、査定項目を減らすことではなく、査定に人手をかけてしまったことにあり、そこを改善するところにあった」(早瀬氏)という。現在、このディーラーの競合企業は、検査項目を150以上に置くなど品質は維持しながら、デジタル査定を採用して人件費を抑えている。一方、中国には査定項目数は250項目以上でAIやロボティクスを活用し、自動化や標準化を図り、効率性を従来の4倍に高めている事例がある。この取り組みは購入者にも手続きの煩雑さなどを解消するなどのメリットがあるようだ。

 早瀬氏は「国別の自動車デジタルディーラーの普及因子を地政学的、政策的、企業的、価値観・文化、テクノロジーの進化という5つの観点で捉えて、次いでB2C・B2B、新車・中古車、既存・新規の視点別にシナリオを作り、ウィズ/ポストコロナ時代のデジタルディーラー戦略を進めることが王道となる」と結論づけた。既に自動車業界ではデジタルディーラーに進出することが不可欠となっている。

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