「つながるクルマ」が変えるモビリティの未来像
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» 2020年09月10日 06時00分 公開

自動運転技術:ソニーが描く“走るコンピュータ”としてのクルマ (1/2)

アマゾン ウェブ サービス(AWS)は2020年9月8〜30日、オンラインでのユーザーイベント「AWS Summit Online」を開催。その中の特別講演として、ソニー AIロボティクスビジネスグループ 執行役員の川西泉氏が登壇し「VISION-S プロジェクト:ソニーのモビリティに対する取り組み」をテーマに、同社が2020年1月に技術見本市「CES」で発表した次世代自動車プロジェクトの概要や今後の挑戦について紹介した。

[三島一孝,MONOist]

 アマゾン ウェブ サービス(AWS)は2020年9月8〜30日、オンラインでのユーザーイベント「AWS Summit Online」を開催。その中の特別講演として、ソニー AIロボティクスビジネスグループ 執行役員の川西泉氏が登壇し「VISION-S プロジェクト:ソニーのモビリティに対する取り組み」をテーマに、次世代自動車プロジェクトの概要や今後の挑戦について紹介した。

photo ソニーの「VISION-S プロトタイプ」のイメージ(クリックで拡大)出典:ソニー

なぜソニーが新たなモビリティを提案するのか

 ソニーは、2020年1月7〜10日に開催された技術見本市「CES 2020」で、次世代のモビリティの姿を模索する「VISION-S プロジェクト」を発表し、同プロジェクトの象徴として試作車「VISION-S プロトタイプ」を出展。特に、試作車を単なるコンセプトモックとしてではなく走行可能なモデルとして一から作り上げた点が注目を集めた。川西氏は「CES 2020でも『ソニーはクルマを作るのか』と大きな関心を持ってもらえた。試作車は、クルマとしての品質や現実性、完成度にこだわって作り込んだ」と語っている。

photo 講演をするソニーの川西氏

 なぜソニーが、ここまで新たなモビリティの提案に力を注ぐのだろうか。川西氏は産業構造の変化について語る。

 「2000年代には携帯電話の業界で大きな変化が起きた。それまでの携帯電話メーカーは、独自のプラットフォームで独自のアプリケーションを用意し、それぞれが固有のサービスを提供してきた。それがスマートフォンの登場で大きく変わり、プラットフォーマーにより規格化されたハードウェア、OS、ソフトウェアの上で、さまざまなベンダーによるアプリケーションを扱う形へと変わった。一方、自動車業界を見るとCASE(コネクテッド、自動運転、シェアード、電動化)による大きな変化が生まれ、クルマの在り方が大きく変わろうとしている。こうしたモバイルの変化と自動車の変化の両方を合わせて考えると、次の10年はモビリティの変化が産業をリードすると考えた」(川西氏)

 ソニーでは、テレビやデジタルカメラなどの民生電子製品、CMOSイメージセンサーを代表としたイメージングデバイス、ゲーム、映画や音楽コンテンツなど、さまざまな事業を展開している。「モビリティによる大きな変化が生まれる中、ソニーとして今持つものを組み合わせることで何ができるのかを考えた。その結果、ソニーのベースを生かすことで、モビリティや移動空間に全く新しいユーザー体験を作り出せるのではないかと考え『VISION-S プロジェクト』を立ち上げた」と川西氏は語っている。

自動車業界の知見を学びつつ、新たなアプローチを

 ただ「人がクルマに乗って移動する」ためにはさまざまな安全基準や規制をクリアする必要がある。川西氏は「自動車業界のモノづくりの技術力や考え方、法規やルールなどを真摯(しんし)に学ぶ必要がある。一方、これらを理解した上で、アプローチを変えなければ新たな価値は生み出せない。IT業界的な水平分業・アジャイル型のプロセスやアセットライトの発想などのスピード感を持ち込み、自動車業界が培ってきた安全・安心と両立させることを目指す」と方向性について語る。

 開発においては、半導体の集積化などでハードウェア構成をシンプル化しソフトウェア領域を拡大する方針を示す。「クルマの電動化が進み、80個以上のECU(電子制御ユニット)が使用されるなど、クルマのハードウェア構成は複雑化している。これが開発効率を高めることができない要因にもなっている。これらをシンプル化しソフトウェア領域を拡張できれば実装の自由度を高めることができる。ネットワークとの親和性も高まり、OTA(Over-The-Air)なども実現しやすい」と川西氏は考えを述べる。

 一方で、ソニーにはクルマのシャーシ開発を行った経験はなく、開発プロセスも含めてノウハウがなかった。そこで、車体の開発についてはオーストリアのマグナ・シュタイヤーをパートナーとし共同で行った。マグナ・シュタイヤーはさまざまな自動車メーカーから完成車生産の受託などを行っている企業であり、システムからモジュール、完成車エンジニアリングまで幅広いノウハウを持っている。共同開発は2018年春から開始した。

 「VISION-S プロトタイプ」は、主にモーターやバッテリーなどの動力系とステアリングやサスペンションなどの操舵系を1つにまとめた「EVプラットフォーム」と、それ以外の「ビークルシステム」の2つに分けて開発された。車載ソフトウェアはクルマ本体に組み込む部分と、クラウドで構成する部分を組み合わせた構成としており、OTAを簡単に実現できるようにしている他、さまざまな外部サービスと連携しやすくしているという。「EVプラットフォームを分けて開発することで、さまざまな目的に応じた車種に対応できる」と川西氏は利点について述べている。

photo 「VISION-S プラットフォーム」のイメージ(クリックで拡大)出典:ソニー
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