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» 2020年10月27日 10時00分 公開

Vlog業界を驚愕させた「LUMIX G100」の立役者、ノキアの「OZO Audio」とは小寺信良が見た革新製品の舞台裏(16)(2/3 ページ)

[小寺信良,MONOist]

マイク2つでも実装できる

―― 今回G100でテストさせていただいたんですが、たった3つのマイクであれだけ鋭い指向性が出せるっていうのが、結構驚きなんですよね。しかも3つのマイクそれぞれの距離が大して離れていない。マイクの実装に関して、最低限このくらいの距離がほしいとか、あるいはものすごく非対称なところに付いていると難しいといったような、最低限の条件みたいなものはあるんですか。

豊田 当然マイク間を結んだ軸をとる必要がありますので、あまりにもマイク同士が近いと厳しい場合もあります。とはいえ、演算は大変にはなりますが、全く不可能というわけでもありません。

―― 先ほどちょっとお話の中に出てきましたけど、マイク2つでもOZO Audioは実装できるんですか。

豊田 もちろんマイクの数が多い方が精度は上がっていきますが、われわれの技術と他社技術との差別化ポイントというのは、マイクが2つ以上なら実現できるというところにあります。

―― 失礼ながらNokia 8で初めてスマートフォンにOZO Audio搭載された際って、当時のレビュー記事を拝見してもあまりフィーチャーされていないというか、その効果が驚きをもって報じられていないように感じます。それはやっぱり時代がついてこなかったから、ということですかね。

豊田 話題にならなかったというよりは、とりわけ日本では、Nokia 8が通信キャリアから発売されたわけではないですし、SIMフリー端末として買われる方がいらっしゃる程度でしたので、グローバルでの評価とは少し違ったのかなと思います。グローバルでは、Nokia 8以降、OZO Audioの知名度がどんどん上がっていて、例えば2020年だけでもOPPO様、One Plus様、それからASUS様などのスマートフォンにご採用いただいています。こと日本に関しては、今回のパナソニック様のご採用が非常に大きかったと思っています。

OPPOの「Find X2シリーズ」(左)とASUSの「ROG Phone 3」 OPPOの「Find X2シリーズ」(左)やASUSの「ROG Phone 3」(右)などスマートフォンのフラグシップモデルに「OZO Audio」が採用されている(クリックで拡大) 出典:OPPO、ASUS

Vlogブームと新型コロナで時代の波をつかむ

―― OZO Audioが注目を集めている背景には、最近とみにYouTubeやライブメディアで、人のしゃべりを録るようになったからだと思うんですよね。Vlogブームといったワールドワイドな追い風もありますが手応えとしてはいかがですか。

豊田 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響により、移動についての大きな制限が生まれています。そして外に出られないからこそ、自撮りで映像を撮って配信するというモチベーションが生まれているのではないかと実感しています。先日、パナソニック様からG100が発表されたときにVloggerの方たちが実際に使用されているのを見ましたが、そういった新たなニーズと合致していたのではないかと思いました。

―― Nokia 8以降はスマートフォン向けの技術ということで注目されてきたわけですが、デジタルカメラでの採用というのは今回のG100が最初なんでしょうか。

豊田 そうですね。カメラという製品をどういうくくりで見るかにもよりますが、いわゆるデジタルカメラについては今回が初めてですね。それ以前ですと、米国の警察組織などで用いられているボディーカメラでAxon様にご採用いただいています。

―― G100で顔認識と連動させて指向性を変えるというのは、画期的なアイデアだったと思います。

豊田 パナソニック様は、本当に開発時点から非常に良いアイデアをたくさんお持ちでした。その中で、当社のOZO Audioを自社製品でどうやったら効果的に使用することができるかということをいろいろと検討した結果、顔認識との連携という機能になったと理解しています。

 もちろんOZO Audioとしても、他のセンサーやAI(人工知能)などと補完し合うことで次の新しいユースケースを作り出すというコンセプトがあったことは一つの大きなポイントになります。当社の開発メンバーも、パナソニック様の実装に当たってご協力させていただきましたが、いろいろと勉強させていただきました。

―― スマートフォンにおけるOZO Audioの機能はどのようなものがありますか。

豊田 Nokia 8の場合、空間音声を360度全周囲でキャプチャーする機能からスタートしましたが、後に「Audio Focus」や「Audio Zoom」という機能に発展しました。

 例えばAudio Focusであれば、スマートフォンのインカメラで自撮りする場合に、カメラを切り替えると自分の方に音声のフォーカスが当たるようにできます。また、360度全周囲の空間音声を録ると、雑踏の中ではどうしてもやかましく聞こえてしまったりするんですが、その際には前方にフォーカスして後方の音声を抑えるといった対応が可能です。これがかなりスマートフォンの使い方にフィットしたのではないかと思います。

「Audio Focus」の機能イメージ 「Audio Focus」の機能イメージ(クリックで拡大) 出典:ノキア

 さらには、前面や背面といった大ざっぱなフォーカスでは機能的に足りないというユースケースも出てきました。そこで、画面に映っている個々のポイントに焦点を当てるというのがAudio Zoomという機能です。現在、スマートフォンメーカー様も、Audio Zoomを活用したさまざまな機能の実装を検討されています。

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