「つながるクルマ」が変えるモビリティの未来像
特集
» 2020年12月21日 06時00分 公開

トヨタ自動車が描く、自動運転車の普及への道のりJIMTOF2020(1/3 ページ)

JIMTOF2020 Onlineが2020年11月16〜27日の期間で開催された。主催者セミナーの基調講演では、トヨタ自動車 先進技術開発カンパニー 先進安全領域 統括部長の鯉渕健氏が「全ての人に移動の自由を—未来のモビリティ社会に向けた自動運転開発の取組み—」をテーマに、自動運転技術開発に関する動向やトヨタ自動車の取り組みなどを紹介した。

[一之瀬 隼,MONOist]

 JIMTOF2020 Onlineが2020年11月16〜27日の期間で開催された。主催者セミナーの基調講演では、トヨタ自動車 先進技術開発カンパニー 先進安全領域 統括部長の鯉渕健氏が「全ての人に移動の自由を—未来のモビリティ社会に向けた自動運転開発の取組み—」をテーマに、自動運転技術開発に関する動向やトヨタ自動車の取り組みなどを紹介した。

夢から現実へ、自動運転への注目

 トヨタ自動車は、自動運転への取り組みを1980年代から始めた。「前のクルマについていく」「白線の中を走る」といった、現在は実用化されている技術の開発が行われていたが、当時としてはかなり難しい技術開発だった。その後1990年代には、道路などインフラと協調する全自動バスなどの開発が行われ、実際に万博などで使用された。しかし、普及に向けてはインフラ整備のコストが高いことから、実用化には至らなかった。

 1990年代後半からは再度、自律的な自動運転システムの開発に力を入れ、現在までさまざまな技術が開発されている。このように、自動運転に関しては30年以上にわたって開発してきており、これが自動運転技術開発の難しさを物語っている。

自動運転技術開発の流行と厳しい競争環境

 自動運転技術の開発は、ここ数年で世界中で行われるようになってきた。それには3つの技術革新が大きく影響している。1つ目は、高解像度、高感度のカメラや3Dイメージスキャナーなど、センサーの性能向上だ。2つ目は、GPUやFPGAなどハードウェアの処理能力の向上。3つ目は、アルゴリズムや機械学習などによる認識ロジックの性能向上だ。

 このように、必要な技術が従来の自動車開発とは変化していることもあり、自動運転を取り巻く開発競争にはさまざまな企業が参入している。例えば、テクノロジー企業の大手や配車サービス企業などが参入し、それらの企業と競争や協業が行われている。また、無線ネットワークでソフトウェアを書き替えることによって付加価値を上げ続ける技術が必要不可欠になり、サービス領域では、先行して開発された有益な技術がマーケットを支配する「Winner takes all」の傾向が顕在化している。このように、未来のモビリティ社会を創り上げていく生き残りを賭けた戦いは、激化し続けている。

 厳しい競争の中で生き残っていくために、トヨタ自動車 社長の豊田章男氏は、2018年の消費者向けエレクトロニクス展示会「CES」でモビリティカンパニーへの変革を宣言。トヨタ自動車は、モビリティカンパニーになるために、「モビリティサービス・プラットフォーム(MSPF)」を開発している。

モビリティサービス・プラットフォームの全体像(クリックして拡大) 出典:トヨタ自動車

 これは、サービスを提供する人に対して、オープンにプラットフォームを開放し、多くのユーザーに提供されるサービスを使ってもらうという考え方で構築されている。このMSPFにおいて自動運転技術は重要な役割を果たす。例えば、サービスの稼働率を上げたり、人員確保が難しい時間帯にサービスを提供したりといったことができるようになる。

トヨタの自動運転開発フィロソフィ

 自動運転技術によって、トヨタ自動車が目指す社会・成し遂げたいことは「安全」「自由な移動」「環境」の3つだ。これらの実現を通して、全ての人が安全に、スムーズに、自由に移動できる社会の実現を目指している。

自動運転技術は安全を実現するための画期的な技術

 安全で目指すのは、交通事故死傷者をゼロにすることだ。そのためには人・交通環境・クルマの三位一体での取り組みが必要だとしている。実際に事故を減らしていくためには、発生した事故を調査解析し、それをシミュレーションで検証、その結果を開発や評価へフィードバックし続けていくことで、交通事故死傷者ゼロへつなげられるという。

 日本において交通事故による死亡者は年々減り続けているが、近年は死亡者の減少率が鈍化している。2019年のデータでも3000人以上の方が交通事故で亡くなっている状況だ。死亡者の多い事故を分析すると、「追突」「路外逸脱」「歩行者」「出会いがしら」「右左折」の5つに分類できる。

右左折時対応の自動ブレーキの作動イメージ。「ヤリス」から右左折時に対応した自動ブレーキを搭載した(クリックして拡大) 出典:トヨタ自動車

 これらの事故が発生し続けてしまう真因を追求していくと、「対象物が見えない」「対象物の急な動き」「高速度、高相対速度」「高齢者の運転能力」に分類される。それぞれの状況を解消していくためには、さらなる技術開発や取り組みが重要だと考えている。

 「対象物が見えない」への対策については、センサーの広角化や認識対象の拡大、通信手段の活用が効果的だ。「対象の急な動き」については、リスクを推定することによる回避余裕の確保や、動きを相手に伝える技術の構築が有効である。「高速度、高相対速度」については、センサー検知距離の拡大や、判断、制御の速さなど高応答化技術の開発が必要となる。「高齢者の運転能力」については、誤操作の検知、精度向上などの技術開発に加えて、平常時の運転診断やアドバイスが効果的である。

 これらを実現する場合には、人間の目に相当するセンサー、脳にあたる認識・予測技術、筋肉となる車両制御を高いレベルで実現することが重要である。これらは、自動運転を実現していくために不可欠な技術であり、自動運転が交通事故を減らしていく上で画期的な技術であるといえる。

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