「つながるクルマ」が変えるモビリティの未来像
特集
» 2021年02月18日 06時00分 公開

ハードウェアと同じくらいソフトウェアを強くする、トヨタのアプローチ車載ソフトウェア(1/3 ページ)

トヨタ自動車とパーソルイノベーションは2021年2月2日、オンラインでソフトウェアエンジニア向けに「ソフトウェアエンジニアが革新するクルマ開発の伝統」と題した勉強会を開いた。

[齊藤由希,MONOist]

 トヨタ自動車とパーソルイノベーションは2021年2月2日、オンラインでソフトウェアエンジニア向けに「ソフトウェアエンジニアが革新するクルマ開発の伝統」と題した勉強会を開いた。

 オンライン勉強会はパーソルイノベーションが展開するサービスの1つで、会員であるソフトウェアエンジニアはさまざまな企業が主催する勉強会を聴講している。勉強会にはトヨタ自動車で車両の電子制御に携わる「制御電子プラットフォーム開発部」のメンバーが登壇。自動車になじみのないソフトウェアエンジニアに向けて、トヨタグループのソフトウェア開発の取り組みを紹介した。

自動車開発の魅力とは

 勉強会に登壇したのはトヨタ自動車 制御電子プラットフォーム開発部 主査 兼 Woven CORE シニアエグゼクティブアドバイザーの長尾洋平氏と、トヨタ自動車 制御電子プラットフォーム開発部 制御ネットワーク・アーキ開発室室長 兼 情報セキュリティ推進室 主査の飯山真一氏だ。

写真左からトヨタ自動車の飯山真一氏と長尾洋平氏(クリックして拡大) 出典:トヨタ自動車

 長尾氏は2017年まで電機メーカーに在籍し、組み込みソフトウェア向けコンパイラシステムや高信頼性ソフトウェアの開発に携わった。自動車関連の仕事も担当したが、クルマそのものに関わるためにトヨタへの転職を決めた。飯山氏は2005年にトヨタに入社し、車載ネットワークの先行開発や量産開発に携わっている。

 飯山氏は自動車開発の魅力について「組み込みシステムは家電から鉄道、航空機や宇宙まで広く使われるが、自動車は特殊なところがある。航空・宇宙のように高い信頼性やリアルタイム性が求められる一方で、家電のように誰もが使う製品であり、コストの制約が大きい。また、クルマを運転する人は鉄道の運転士や航空機のパイロットのように限定されておらず、どんな人がどこを走るか分からない点や、どのメーカーの製品でもステアリングとアクセル、ブレーキの3つで操作できる点は他の分野と比べてユニークだ」と語る。

自動車の組み込みシステムは家電と航空宇宙、両方の要素を含んでいる(クリックして拡大) 出典:トヨタ自動車

 また、「自動車はさまざまな技術の集合体であり、幅広い技術を経験するチャンスやモノを動かす手応えが得られるが、泥くさいところもたくさんある。エンジンやトランスミッション、サスペンションなどメカの部分はメディアにもよく取り上げられるが、電子制御の部分はなかなか見られる機会がない」(飯山氏)と述べた。

車載ネットワークの現在地

 自動車になじみのない聴講者向けに、自動車の電子制御を支える車載ネットワークの構成の例も示した。トヨタの車載ネットワークで「最も複雑」(飯山氏)だという90個以上のECU(電子制御ユニット)の構成を図で示すとともに、これらのECUが多くのワイヤハーネスでつながっていることも紹介した。「1台の車両に搭載されるECUの数は1990年に10個程度だったのが、2017年には多い場合に100個以上まで増えた。そこに流れるデータ量は2017年には1万3000種類に広がっている。自動車のソフトウェアの大規模化、複雑化は、こういったところに現れている」(同氏)。

トヨタ車の車載ネットワークの例(クリックして拡大) 出典:トヨタ自動車

 自動運転車の働きが人間の脳や筋肉、視覚に例えられることがあるが、そのような統合処理型の車載ネットワークの実現はとてもハードルが高いことにも言及した。現時点では例に挙げた90個のECUは統合されず、自立して動作している。「ECUごとにソフトウェアや構造、信頼性が全く違うため、ひとまとめに統合処理するのは簡単ではない。ソフトウェアは信頼性が低い方に引きずられる傾向があるので、1つにまとめて処理するには信頼性が低い方のソフトウェアを設計し直さなければならない。コストもハードルだ。コンピュータの世界は性能とコストは等倍ではなく、性能を上げるとコストが指数関数的に増える。コストと統合処理のメリットをどう判断するか、バリエーションが増やしにくくなることをどう考えるかという課題がある」(飯山氏)。

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