インタビュー
» 2021年04月02日 06時00分 公開

ナイロン不足は長期化の見通し、ヘキサメチレンジアミンを使う他の素材への影響も材料技術(1/2 ページ)

ナイロンの供給に関しては2018年ごろにも問題が発生したが、今回はさまざまな原因が絡み合っていることで供給不足が長期化しかねない。エンジニアリングプラスチックを手掛けるオランダの化学大手DSMに、ナイロンと代替素材の状況について話を聞いた。

[齊藤由希,MONOist]

 電話が鳴り止まないほど、問い合わせが殺到しているモノがある。供給が逼迫(ひっぱく)するナイロンの代替となる素材だ。ナイロンはテキスタイル(布地)だけでなくエンジニアリングプラスチックとしても使われており、自動車でもさまざまな部品に採用されている。

 ナイロンの供給に関しては2018年ごろにも問題が発生したが、今回はさまざまな原因が絡み合っていることで供給不足が長期化しかねない。エンジニアリングプラスチックを手掛けるオランダの化学大手DSMに、ナイロンと代替素材の状況について話を聞いた。

もともと供給不足が起きやすかったナイロン

 一般的にナイロンと呼ばれるのは「PA66(ポリアミド66、ナイロン66)」だが、供給不足でネックになっているのはPA66ではなくその原料となるヘキサメチレンジアミン(HMDA)とアジピン酸(C6)だ。現在、10社ほどの素材メーカーがこの2つの材料に関して債務不履行責任の免除を求めるフォース・マジュール宣言を出している。

 DSMの日本法人DSMエンジニアリングマテリアルズ 日本・韓国・東南アジア地域のコマーシャルディレクターを務める高雄良平氏は「必要な量の7割しかナイロン66を入手できていない会社もあるようだ」と影響の大きさを説明する。ヘキサメチレンジアミンは「PA610」「PA6T」「PA6I」といった他のポリアミドの原料でもあり、PA66以外でも価格高騰や供給不足が予測されるという。

ナイロンそのものではなく原料に供給リスクがある(クリックして拡大) 出典:DSM

 2018年ごろに発生したナイロン66の供給不足も、原因はヘキサメチレンジアミンだった。もともと、ヘキサメチレンジアミンやその原料となるアジポニトリルを生産できる素材メーカーは少ない。ただでさえ供給元が限られているところに、災害の被害による操業停止や設備点検による休業などが重なった。「このときの影響は材料の価格アップにとどまり、影響も短期間で解消した。しかし、今回は長期化する条件が複数ある」と高雄氏は説明する。

 ヘキサメチレンジアミンのサプライヤーが少ないという以前からの状況に加えて、自動車や家電などナイロン66を使う製品の販売がコロナ禍においても好調で需要が急回復していた。さらに、2021年2月には、化学メーカーの拠点が集中する米国テキサス州を寒波が襲った。停電で停止した工場の再稼働には時間がかかる。船便、航空便ともに物流が混み合っていることも、供給不足を加速させている。

 「影響がどれだけ長引くか具体的に見通すのは難しい。自動車や家電に起因する需要拡大のペースがいつまで続くのか、物流がいつ改善するのか、2つのボトルネックがある。素材の供給が改善しても、作った素材を運べないままでは状況は状況が良くなるとはいえない」(高雄氏)

 化学プラントは増設が難しく、ヘキサメチレンジアミンの生産能力が迅速かつ大幅に増強されることはあまり期待できない。「ヘキサメチレンジアミンの製造拠点は米国に集中している。今回の教訓を基に拠点が分散されるかもしれないが、新たな化学プラントが稼働するには3〜5年かかる」(高雄氏)。ヘキサメチレンジアミンの供給リスクは引き続き存在しているといえる。

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