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NTTと富士通が光電融合デバイスの開発で提携「IOWN構想でゲームチェンジ」組み込み開発ニュース(1/2 ページ)

NTTと富士通が「持続可能な未来型デジタル社会の実現」を目的とした戦略的業務提携に合意したと発表。同提携では「光電融合製造技術の確立」「通信技術のオープン化の推進」「低消費電力型・高性能コンピューティング実現に向けた共同研究開発」を進める。

» 2021年04月27日 08時00分 公開
[朴尚洙MONOist]

 日本電信電話(NTT)と富士通は2021年4月26日、オンラインで会見を開き、「持続可能な未来型デジタル社会の実現」を目的とした戦略的業務提携に合意したと発表した。同提携では「光電融合製造技術の確立」「通信技術のオープン化の推進」「低消費電力型・高性能コンピューティング実現に向けた共同研究開発」を進める。

会見に登壇したNTTの澤田純氏(左)と富士通の時田隆仁氏(右) 会見に登壇したNTTの澤田純氏(左)と富士通の時田隆仁氏(右)(クリックで拡大)

 今回の提携では、NTTが提唱するIOWN(Innovative Optical and Wireless Network)構想に基づき、NTTが持つ世界有数の特許数を誇る光技術をはじめとした通信技術や運用ノウハウ、世界トップの性能を持つスーパーコンピュータ「富岳」に代表される富士通のコンピューティング技術など、両社の強みが生かせる分野において共同研究を進める。そして、それらの成果を活用したグローバルなオープンイノベーションを通じて、低エネルギーで高効率、かつ持続可能なデジタル社会を実現することで、両社で共有するビジョンの具現化を目指す。

NTTと富士通の「持続可能な未来型デジタル社会の実現」に向けて提携イメージ NTTと富士通の「持続可能な未来型デジタル社会の実現」に向けて提携イメージ(クリックで拡大) 出典:NTT、富士通

 NTT 社長の澤田純氏は「電気から光に方式を変更するIOWNという新たな基盤によりゲームチェンジを進め、自立した日本そして世界への貢献を図っていく。その結果として社会の持続的成長を実現していけるだろう」と語る。一方、富士通 社長の時田隆仁氏は「今後あらゆる分野のあらゆる現場でDX(デジタルトランスフォーメーション)が進み、業種間やシステム間で流通するデータの価値が高まっていくだろう。持続可能なグリーン社会を目指しつつ、膨大なデータ量を究極のリアルタイムで処理していくためには、社会インフラとしてのネットワークやコンピューティングの技術の飛躍的な進化が不可欠だ。そこで、同じビジョンを持つNTTとの提携を決めた」と述べる。

高性能光通信用コパッケージを2022年度内に提供開始

 今回の提携のうち「光電融合製造技術の確立」では、NTTの光通信用LSI技術と富士通の半導体実装技術の融合を目指し、NTT子会社のNTTエレクトロニクス(NEL)が富士通子会社の富士通アドバンストテクノロジ(FATEC)の株式66.6%を富士通から2021年6月1日に取得する。同日から、FATECはNTTエレクトロニクスクロステクノロジとして事業を開始する。

「光電融合製造技術の確立」に向けてNELがFATECの株式66.6%を取得する 「光電融合製造技術の確立」に向けてNELがFATECの株式66.6%を取得する(クリックで拡大) 出典:NTT、富士通

 NTTエレクトロニクスクロステクノロジは、デジタルコヒーレント光通信用LSIと、光送受信用のトランシーバー内のさまざまな光デバイスをシリコンチップ上に集積したCOSA(Coherent Optical Sub Assembly)を一体化した、光電融合技術に基づく小型で省電力な高性能光通信用コパッケージについて2022年度内の提供開始を目指す。この光通信用コパッケージの小型化では、デバイスを一体化する実装技術が重要な役割を果たすため、NELがFATECに出資することでこの実装技術を強化する。

 2022年度提供予定の光通信用コパッケージに続き、LSIと光チップを混載する製品として、2024年に光・電子コパッケージ実装、2025年にチップ間光伝送の実現を目指す。2030年にはチップ内のコア間光通信やチップ内の光信号処理などを実現するなどして光電融合コンピューティング技術を進化させて光による計算処理を果たし、エネルギー効率の高いICTシステムとして実現していく考えだ。

光電融合デバイスの進化イメージ 光電融合デバイスの進化イメージ(クリックで拡大) 出典:NTT、富士通
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