特集:IoTがもたらす製造業の革新〜進化する製品、サービス、工場のかたち〜
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» 2021年09月01日 10時00分 公開

いきなり社長に呼ばれたらDXセキュリティ対策を丸投げされた件事例で学ぶ製造業DXセキュリティ対策入門(1)(1/4 ページ)

中堅化学薬品メーカーのABC化学薬品に勤める新卒入社6年目の青井葵。彼女はいきなり社長室に呼ばれ、社内DXセキュリティプロジェクトチームのリーダーに任命される。それまで社内のセキュリティ問い合わせ担当だった青井にとって、これはいきなり荷が重すぎる! 元工場長の変わり者、古井課長の支援の下、果たしてプロジェクトの命運はいかに!?

[佐々木弘志,MONOist]

 さまざまな産業分野でデジタル技術の導入による業務効率化や事業拡大に向けたDX(デジタルトランスフォーメーション)が求められるようになっています。国内産業で主要な役割を果たす製造業もその例外ではありません。AI(人工知能)やIoT(モノのインターネット)、クラウドなどを活用した「DXプロジェクト」を立ち上げるなどして取り組みを加速させています。

 しかし、分かりやすい価値を生み出すDXに対して、取り組みが遅れがちなのがセキュリティ対策です。例えば、スマート工場の場合、歩留まりや品質などを高めるDXは現場から歓迎されますが、いつ起こるかも分からないようなサイバー攻撃に対応するためのセキュリティ対策は前向きに推進されないことが多いのです。とはいえ、海外では製造業も関わる社会インフラなどに重大な影響を与えるサイバー攻撃が増加しており、セキュリティ対策をおろそかにすることは企業の事業継続に大きな問題が発生しかねません。

 そこで本連載では、国内中堅化学薬品メーカーのABC化学薬品に勤める新卒入社6年目の青井葵を主人公に、製造業がDXプロジェクトと併せて進めるべき「DXセキュリティ対策」について解説します。

本連載の登場人物

青井葵(あおいあおい):ABC化学薬品のセキュリティ問い合わせ担当から会社全体のDXセキュリティのプロジェクトに大抜てきされた。新卒入社6年目。人当たりがよく、元気印の愛されキャラ。趣味は旅行、ラノベ・アニメ鑑賞。


古井静三(ふるいせいぞう):ABC化学薬品のセキュリティ担当課長、元工場長で現社長の黒川とは盟友関係。工場長時代に大病を患い2年ほど職場を離れたあと、趣味のPCの知識を生かして、数年前にセキュリティ部門の担当課長として職場復帰。いつもひょうひょうとしていてつかみづらい変わり者。趣味は無線、PC自作、釣り。


黒川洋(くろかわひろし):ABC化学薬品の社長、老舗の中堅化学メーカーにしては珍しい50代社長。いつも柔和な笑みをたたえていて穏やかな風貌だが、前社長が高く評価した切れ者の一面もある。趣味はジャズ、クラッシック鑑賞、ゴルフ。


※)編集部注:本記事はフィクションです。実在の人物、団体などとは一切関係ありません。

プロローグ:いやいや、冗談でしょ!?

 私の名前は青井葵。新卒入社6年目で、情シス部門のセキュリティ担当のリーダーを任されている。とはいっても、日々の作業といえば、毎日やってくる社内のセキュリティ関連の問い合わせに対応することで、リーダーとは名ばかりの現場バリバリの仕事である。

 今日はいつもよりも問い合わせが少なく平和でよかった。

青井さん、ちょっと一緒に来てくれる?


 この人が、笑いをかみ殺したような表情で近づいてくるときはいつもロクなことがない。いやな予感がしながら作業を止めて席を立ち、課長の後を追った。

 課長に連れてこられたのは、何と社長室で、目の前には満面の笑みをたたえた黒川社長が座っていた。

青井さん、このたび、あなたを社内のDXセキュリティプロジェクトチームのリーダーに任命します。工場の現場経験豊富で、PCに詳しい古井さんがサポートしてくれますので、思う存分腕を奮ってください。期待していますよ。


へ? どういうことですか?? 私がリーダー???


 突然の事態に思わず変な声が出る。

いや、驚くのも無理はないですね。古い体質のうちにとっては、かなり大胆な人事ですから。しかし、わが社も2年後の2024年には創立100周年を迎えます。そこから新しい100年を目指すには、若いリーダーを育てようと、そういう話になりましてね。社内で幾つかDXプロジェクトを進めているのですが、なるべく若い人に任せようと。


はぁ……。でもなぜ私なんですか?


それは古井さんからの推薦でね。彼とは昔同じ工場で上司部下の関係だったのですよ。彼のことは信頼しています。わが社の次の100年のためにぜひとも青井さんの力を貸してください。


はい! 私なりに全力で頑張ります!!


 黒川社長の満面の笑みにつられて、思わず元気よく返事をしてしまった後、課長の方を見ると、いつにはない厳しい表情で正面を見つめていた。

いやいやいやいや……。そもそも何していいかがさっぱり思い浮かばない。というか今すぐ異世界に転生したい。


 その日は、ぼうぜんとしたまま仕事が手に着かず、帰途に就いたのだった。

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