製造業×品質、転換期を迎えるモノづくりの在り方 特集
連載
» 2010年07月30日 00時00分 公開

本質から分かるタグチメソッド(1):本当の「タグチメソッド」を誤解していませんか? (4/4)

[長谷部 光雄/タグチメソッドコンサルタント,@IT MONOist]
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タグチメソッドの特徴は、顧客満足度の追究

 ではタグチメソッドとは、何が特徴なのでしょうか。品質管理の限界を超えることが目的ですから、その限界が何に起因するかを明確にすれば、特徴はおのずと明らかになるはずです。

 従来の品質管理を一言で表現すると、目標管理です。決められた作業をきちんと行い、決められた性能を発揮する製品を作るように「維持管理」するから品質管理なのです。

 しかし、このやり方では不十分なことは、すでに1990年代から知られていました。当時はリコールという言葉ではなかったですが、検査では見えない市場の不具合が存在することを、モノづくりの専門家たちは気付いていました。

 ですからその対策として、それまでのQCといういい方ではなくTQMという新しい名称を作り出しました。その狙いは、自分たちが決めた目標を検査するだけではなく、消費者の立場に立った品質を追求しようという品質創造活動に進化するためです。ですからTQMを一言で表現すれば、タグチメソッドの特徴は、顧客満足度の追求といえるでしょう。

タグチメソッドはTQMの具現化手法

 消費者の立場に立った理想状態を追求するというTQMの考え方が、そのままタグチメソッドの特徴です。タグチメソッドとは、TQMの考え方を具現化する手段を提供しているのです。

 経済同友会の代表幹事でありリコーの取締役会長執行役員でもある桜井 正光氏は、品質管理学会の会長だった2006年当時、品質管理と品質工学(タグチメソッド)の融合を主張しています。従来の品質管理の限界と、リコー社内で普及していたタグチメソッドの可能性の両方を感じていたからだと思います。

本来のTQM=従来の品質管理(QC)+タグチメソッド


タグチメソッドの狙いは未然防止

 未然防止に関しては、もちろん従来の設計でも検討されていました。しかし、未然防止のためには、設計段階で市場の不具合を予測しなければならないので、多種多様な条件を短期間に確認する合理的な手法が必要です。従来は、その有効な手法が確立されていなかったため、リコールを引き起こすような「見落とし」がどうしても発生していました。

 リコールを防ぐには、設計段階での技術検討を合理的にかつ効率的に行う新たな手法が必要です。タグチメソッドは、いままで効果を上げてきた品質管理手法の適用できない設計や開発の領域で、有効な未然防止を行う方法論なのです。

 従来法の限界を乗り越えるためには、いままでにない革新的な考え方やツールが必要になるはずです。しかし、その革新性が多くの誤解を生んでいるのです。したがって次回では、未然防止への考え方と、効率化のツールに関して、その本当の意味を解説したいと思います。


筆者紹介

長谷部 光雄(はせべ みつお)
品質工学会会員、日本信頼性学会会員

株式会社リコーで技術開発センター所長を歴任後、技師長および顧問として同社のグループ会社全体を対象に品質工学の指導と推進を担当。
主な著書に『ベーシックタグチメソッド』(日本能率協会マネジメントセンター、2005年)、『技術にも品質がある』(日本規格協会、2006年)、『品質力の磨き方』(PHP研究所、2008年)など多数。



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