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» 2015年10月14日 11時00分 公開

エコカー技術:新型「プリウス」は目標燃費40km/lをどうやって達成するのか (4/6)

[朴尚洙,MONOist]

複軸構造になったトランスアクスル

 トランスアクスルは、トヨタ自動車のハイブリッドシステムの根幹と言ってもいい構成要素だ。走行用モーターや発電機といったモータージェネレータ(MG)、エンジン動力を駆動輪や発電機に伝達する動力分割機構、そしてモーター動力を減速するモーターリダクション機構から成る。

 新開発のハイブリッドシステムでは、トランスアクスルの各機構の構成を大幅に変更するともに、それ合わせたモーターリダクション機構の方式変更、モータージェネレータの大幅改良を行った。

 3代目プリウスのトランスアクスルでは、エンジンの動力伝達軸と同じ軸上に、動力分割機構、モーターリダクション機構、走行用モーター、発電機が配置されていた。

 新開発のハイブリッドシステムでは、エンジンの動力伝達軸上に、動力分割機構と発電機を配置する一方で、走行用モーターの動力伝達軸はエンジンの動力伝達軸とは別軸になる複軸構造を採用した。この走行用モーターの動力を駆動輪に伝達するとともに減速も行うモーターリダクション機構は、従来の遊星歯車方式から平行軸ギヤ方式に変更されている。

3代目「プリウス」(左)と新型プリウスのトランスアクスルの比較 3代目「プリウス」(左)と新型プリウスのトランスアクスルの比較。黒色の部分がモータージェネレータで、赤色の部分が動力分割機構、水色の部分がモーターリダクション機構になる(クリックで拡大) 出典:トヨタ自動車
3代目「プリウス」のトランスアクスルのカットモデル新型「プリウス」のトランスアクスルのカットモデル 3代目「プリウス」(左)と新型プリウス(右)のトランスアクスルのカットモデル(クリックで拡大)

 これらの改良により、トランスアクスルの全長は、3代目プリウスの409mmから約12%短縮され362mmとなった。中でも、モーターリダクション機構の平行軸ギヤ方式への変更は小型化と損失の大幅な低減に貢献しているという。一方、動力分割機構については従来と同じ遊星歯車方式のままである。「『THS IIの可能性を高める』ということは、THS IIの最大の特徴である、遊星歯車方式の動力分割機構を変更しないという意味でもある」(伏木氏)という。

 なお、複軸構造の採用などにより、トランスアクスルそのものの損失は3代目プリウスと比べて20%低減できている。

走行用モーターはセグメント分布巻きに

新型「プリウス」の走行用モーター(MG2) 新型「プリウス」の走行用モーター(MG2)。巻き線方式として新たにセグメント分布巻きを採用している(クリックで拡大)

 THS IIでは、走行用モーターと発電機、2つのモータージェネレータが用いられる。新開発のハイブリッドシステムでは、走行用モーターと発電機、両方のモータージェネレータに大幅な改良が加えられた。

 まず、トランスアクスルの中でMG2と呼ばれる走行用モーターについては、ステーターの巻き線の方式を、従来の丸線の分布巻きから、平角線を使ったセグメント分布巻きに変更した。巻き線ターン数は8ターンあり「自動車用途での採用は初になるだろう」(同社の説明員)という。この方式変更によって、ステーターは従来比で20%の小型化、同15%の軽量化が可能になった。

 MG2は、ローターについても磁気回路の見直しで高調波の発生を抑えるなどの改良によって、ステーターの小型化に対応している。加えて、永久磁石の使用量も従来比で15%以上減らしているという。

新型「プリウス」の走行用モーターの構造 新型「プリウス」の走行用モーターの構造。セグメント分布巻きを採用したステーターに、磁気回路の見直したローターを組み込む(クリックで拡大) 出典:トヨタ自動車

 MG1と呼ばれる発電機については、巻き線方式は従来と同じ丸線の集中巻きだが、損失低減や従来比で約15%の小型化が可能になるような工夫を加えている。

 複軸構造になったトランスアクスルとは別に、大幅改良した2個のモーターの損失は、3代目プリウスと比べて20%低減できている。

 なお、トランスアクスルのモーターの最高出力は53kW、最大トルクは163Nmである。3代目プリウスのトランスアクスルが、最高出力60kW、最大トルク207Nmなので、大幅に低下したように思える。「確かにピークの性能値は下がっている。しかしこれは、従来よりも広範囲にモーターを活用するようになったためで、全体的に見ればほぼ同等の性能を保っている」(同説明員)という。

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