連載
» 2016年03月01日 10時00分 公開

クルマから見るデザインの真価(9):自動車用ホイールとデザインの深イイ関係 (4/4)

[林田浩一/林田浩一事務所,MONOist]
前のページへ 1|2|3|4       

TWS

 BBSと同様に鍛造専業のホイールメーカーであるTAN-EI-SYA(旧鍛栄舎)の自社ブランドがTWSである。BBSと異なるのは乗用車のみならずトラックやバスなどの重量級大型車のホイールなども製造していることや、他のアフターホイールメーカーのOEMも事業としていることになるだろうか。

 2010年にTWSブランドの商品を始めて以来、オートサロンの会場でもフェラーリやPorsche(ポルシェ)を並べるブースは目を引く存在となっている印象だ。TAN-EI-SYAもF1用ホイールの供給も行う鍛造専業だけあって、アルミホイールのみならずマグネシウムホイールもラインアップしている。

「東京オートサロン」では、ホイールメーカーが自社のホイールをアピールすべく高級スポーツカーを使って展示を行う 「東京オートサロン」では、ホイールメーカーが自社のホイールをアピールすべく高級スポーツカーを使って展示を行う。TWSは「フェラーリF12」を展示した(クリックで拡大)

 今回のオートサロンでは、「Ultra Dura Metal(UDM)」と呼ぶ新素材アルミニウムを使った鍛造ホイールが展示されていた。説明によると、「超超ジュラルミンと同様に、一般的な材料である6061材よりも優れた引張強度などを確保しつつ、『疲労強度』を超超ジュラルミン以上に高めた合金」とのこと。説明員の話によると、超超ジュラルミンも研究していく中で新たな素材開発に至った様であった。ブースではあまり詳しいことは伺えなかったが、新しい材料はデザインにも何か影響を与えるだろうか。

「UDM」の概要UDMを用いた22インチホイール 「UDM」の概要(左)とUDMを用いた22インチホイール(右)(クリックで拡大)

ワーク

 ワークで興味を引いたのは「SION」と呼ぶオーダーメイドのサービスだ。ブースで説明員の方に話を伺うと、ワークの鍛造ホイールは金型を使わず、鍛造ビレット材を海外から調達し丸々全体を切削で作るという方法で作ってきており、そのリソースを活用した新たな企画という流れから出てきたサービスだという。

ホイールのオーダーメイドサービス「SION」の製作工程 ホイールのオーダーメイドサービス「SION」の製作工程(クリックで拡大)

 ユーザーは1台分から全くのオリジナルデザインでホイールを作ることが可能である。このSIONというサービス、まだ手探りということなのか企業イメージづくりの一環というような位置付けなのか、あまり積極的にプロモーションしている様子もない。2016年のオートサロンブースでも、目立たない隅の方にひっそりと展示されている。それでも2015年のオートサロンで発表後、1年の間で(正確な数は教えていただけなかったが)数十台のオーダーを受けたとのことで、ワークとしても「思った以上に売れた」という実感だそうだ。

 オーダーの流れとしては、まずはユーザーの元へ出向き、車両のホイールハウスやブレーキ周りを計測し、ホイールのサイズやフェンダーに対する位置などを打ち合わせる。その後デザイン案を3DCGで起こし、ユーザー車に合成した絵でデザインを決めていく。完全オリジナルでデザインできるといっても、実際には「○○のホイールと似たもの」とか「純正品がもはや手に入らないオールドカーにレプリカとして再現」といった要望が多く、自分でオリジナルのデザインを持ち込むまでのユーザーはほぼいないとのこと。その後は材料の手配状況によるが数カ月で納品し、オーナーの元でクルマに装着するところまで立ち会うという。

 1台分のオーダーメイドや少量生産を可能とする環境の整備に伴って、新しいサービスも創出される。SIONのようなサービスもこれから注目していきたい動向の1つだ。

変わらないことと変わること

 当面はクルマにおけるホイールの役割は大きく変わらないだろうが、デザイナーとして興味を引かれるのは、新しい素材や加工法、それにエアレスタイヤなど駆動輪そのもの概念を変えようとしている色々な動きが見られることである。

 また自分も含め、人々のライフスタイルの変化も考えつつ「モノづくり」全体で見ると、従来型の大量生産とフルオーダーメイドの「1点モノ」の間に位置するようなモノづくりのモデルは、今後の方向性の1つだと考えているので、そういったことができる環境が整いつつあることにも注目している。

 素材や製造の手法に選択肢が増えてくると、モノとしての在り方や、さらにはビジネスモデルにも変化が出てくるかもしれない。そこではデザインの選択肢も変化してくるだろう。デザイナーとしては楽しみである。もっともこれは、ホイールやクルマだけのことではなく、モノづくりに関わるところにいるということでの楽しみなのだけれども。

Profile

林田浩一(はやしだ こういち)

デザインディレクター/プロダクトデザイナー。自動車メーカーでのデザイナー、コンサルティング会社でのマーケティングコンサルタントなどを経て、2005年よりデザイナーとしてのモノづくり、企業がデザインを使いこなす視点からの商品開発、事業戦略支援、新規事業開発支援などの領域で活動中。ときにはデザイナーだったり、ときはコンサルタントだったり……基本的に黒子。2010年には異能のコンサルティング集団アンサー・コンサルティングLLPの設立とともに参画。最近は中小企業が受託開発から自社オリジナル商品を自主開発していく、新規事業立上げ支援の業務なども増えている。ウェブサイト/ブログなどでも情報を発信中。



前のページへ 1|2|3|4       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.