シェフラーの“すり合わせ”が前進、成果は日産向けの電動可変バルブタイミングにシェフラージャパン 代表 四元伸三氏 インタビュー(1/3 ページ)

シェフラージャパンは、「人とくるまのテクノロジー展2016」において、シェフラー初となる電動可変バルブタイミング機構を紹介した。開発は日産自動車と共同で行い、間もなく量産を開始する予定だ。ホンダ向けに供給したDCTでリコールが頻発した反省を踏まえ、“すり合わせの力”を磨いて日産自動車との協業に臨んだ。

» 2016年06月10日 10時00分 公開
[齊藤由希MONOist]

 シェフラージャパンは、「人とくるまのテクノロジー展2016」(2016年5月25〜27日、パシフィコ横浜)において、シェフラー初となる電動可変バルブタイミング機構を紹介した。同社の油圧制御の可変バルブタイミング機構と同等のサイズを実現するとともに、競合比で1割以上小型化した。開発は日産自動車と共同で行い、間もなく量産を開始する予定だ。ホンダ向けに供給したDCT(デュアルクラッチトランスミッション)でリコールが頻発した反省を踏まえ、“すり合わせの力”を磨いて日産自動車との協業に臨んだ。

シェフラー初となる電動可変バルブタイミング機構 シェフラー初となる電動可変バルブタイミング機構 (クリックして拡大)

可変バルブタイミング機構を電動化、サイズは油圧タイプとほぼ同等

 可変バルブタイミング機構は、運転状況に合わせて吸排気のバルブの開閉タイミングを制御することで、エンジンの出力や環境性能を向上させる。トヨタ自動車、ホンダ、マツダが既に電子制御の可変バルブタイミング機構を採用しており日産自動車がこれに続く形となるが、海外自動車メーカーも含めると主流は油圧制御だという。

 油圧制御の可変バルブタイミング機構はエンジンの駆動力に依存しており、作動できる範囲のエンジン回転数や、応答速度に制限があるのが課題だった。また、温度にも制約を受ける。低温では潤滑油の粘度が高いため、ある程度暖まるまでは作動できないというデメリットがあった。

 可変バルブタイミング機構を電動化することにより、油圧制御の課題を克服し、加速レスポンスの向上や環境性能の改善が図れる。また、アイドリングストップシステム搭載車の場合、電動可変バルブタイミング機構で最適なバルブタイミングを設定することにより、エンジンを再始動する時の振動を低減できるとしている。

 シェフラーとして初めて手掛ける電動可変バルブタイミング機構は、同社の油圧制御タイプとほぼ同じサイズを実現したのを特徴としている。通常は、モーターやギアボックスの大きさが影響し、電動可変バルブタイミング機構は油圧制御タイプよりもサイズが大きくなるという。油圧制御タイプと同等のサイズとしたことにより、既存の油圧制御タイプから置き換えが容易になり、自動車メーカーは搭載するエンジンを増やしやすくなる。

写真手前が電動可変バルブタイミング機構。写真奥の3つは従来の油圧制御タイプ 写真手前が電動可変バルブタイミング機構。写真奥の3つは従来の油圧制御タイプ (クリックして拡大)

 また、競合サプライヤーの電動可変バルブタイミング機構と比較すると「1割以上は小型」(シェフラージャパン ジャパンエグゼクティブボード チーフテクノロジーオフィサーの栗城剛氏)だという。

 サイズ拡大を抑えながら可変バルブタイミング機構を電動化することができたのは、減速比が大きく機械効率の良い減速機構を採用し、モーターを小型化したことによる。採用した減速機構は「ウェーブジェネレーター(波動歯車機構)」と呼ばれるものだ。

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