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» 2019年11月25日 10時00分 公開

製造業DX:マイクロソフトの製造業担当トップが強調する、DX4つの論点とその前提にあるもの

製造業向けのデジタルトランスフォーメーション支援に力を入れるマイクロソフト。製造業がDXを進める上で重要視すべきポイントは何か、またマイクロソフトが支援する中でどういう点を重視しているのか。マイクロソフトで製造業分野を統括するチャリオン・アルカン氏に話を聞いた。

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 デジタルトランスフォーメーション(デジタル変革、DX)の波は製造業にも大きな影響を及ぼしつつある。しかし現実的には、多くの製造業が戸惑いながら、取り組みを進めている状況だ。こうした中で、マイクロソフトは製造業を「最もフォーカスする領域」だと位置付けるなど、支援を強化している。その具体的な支援策や、重視すべきポイントとはどういうものがあるのだろうか。マイクロソフトのバイスプレジデントで製造業分野を統括するCaglayan Arkan(チャリオン・アルカン)氏にその詳細を聞いた。

「顧客に寄り添う」中で4つのキートピックに集約

photo マイクロソフト バイスプレジデント チャリオン・アルカン氏

 「製造業」と一口でいっても、その業種や取り扱う製品はさまざまだ。また、製品や製造プロセス、そしてサプライチェーンの仕組みや、これらに対するデジタル技術の適応度なども企業によって大きく異なる。グローバル化やその進捗度なども同様で、これらの条件に合わせたDXを進めていくことが求められている。

 ただ、マイクロソフトでは「Customer Obsessed(顧客視点への注力)」の下、これらの「違い」に寄り添う姿勢を示しているという点が特徴である。

 2014年にマイクロソフトのCEO(最高経営責任者)に就任したSatya Nadella(サティア・ナデラ)氏は、グローバルの全社員に向けて「マイクロソフトは顧客に寄り添う存在になるべきだ」とのメッセージを発信した。その目的は「Customer Obsessed(顧客視点への注力)」の理念を全社員に定着させることだった。今、この理念は特に製造業部門に「文化」として定着しているという。アルカン氏は「ユーザー企業が何をやりたいのかという点、そしてそれに対してわれわれが何を手伝えるのかという点が重要です。この2つを起点としてさまざまな支援を進めます」と語る。

この考えの下、マイクロソフトでは多くの製造業のDXプロジェクトに参加。その中で製造業におけるDXの方向性を4つのキートピックに大別し、必要となるソリューションをさまざまな粒度で展開している。

人にフォーカスした働き方改革

 1つ目のキートピックが「人にフォーカスした働き方改革」である。

 現在、多くの製造業では労働者の不足や高齢化問題を抱えている。若い人が職業を選択する際に製造業を避けると同時に製造業従事者の高齢化と退職が進み「技術伝承ができない」「新たなスキルの取得が困難である」という課題も増えてきている。

 今後、製造業がこうしたワークフォースシフトに対し立ち向かっていくためには「デジタル技術を効果的に活用していくことが必須だと考えます」(アルカン氏)とする。「ワークフォースが変化しシフトしていく中で、企業には大量の失業者を生むことなくイノベーションを推進し、生産性の向上で競争力維持することが求められています」(アルカン氏)。

 具体的に働き方改革の面では「人材採用、育成、訓練」「スキル向上による効率的な働き方の実現」「コミュニケーション、コラボレーションツールの提供によるモダンワークプレースの実現」「福利厚生の充実と社員の安全性確保」の4つを支援する。

 アルカン氏は「企業活動の中心はあくまでも『人』です。求められるスキルが大きく変化する中でさまざまな新しい技術が登場しています。こうした新技術をストレスなく活用できるようにトレーニングなどが従来以上に重要になるでしょう」と語る。例えば、熟練デザイナーであってもARやVRを活用するには一定のトレーニングが必要になるかもしれない。また、従来マニュアルで行っていた作業を自動化できるようになると、機械も含めたワークフォースの最適化などの考え方が必要になる。さらに、グローバル化や複数拠点との相互連携が進めば、文化や言語に束縛されないコミュニケーションなども必要だ。

 こうした新たな「働き方」に対してマイクロソフトでは、企業活動のデータを統合しそれぞれの用途で活用できるようにするさまざまなアプリケーションを用意する他、Surface GoやHoloLensなどのデバイスも組み合わせて幅広い支援を行えることが特徴である。これらの支援を積極的に推進する一方で「こうした課題解決は1つの企業努力だけでは実現できません。政府や教育期間、業界団体が連携して社会課題として捉え、解決していく必要があります」とアルカン氏は考えを述べる。

製品、サービス、ビジネスのイノベーション

 2つ目のキートピックとしてアルカン氏が挙げるのは「イノベーション」だ。イノベーションには3つの領域があると同氏は説明する。それが「製品のイノベーション」「サービスモデルのイノベーション」「ビジネスモデルのイノベーション」だ。

 「製品のイノベーション」では、「新たなモノづくりプロセスの実現による革新」と「スマートコネクテッド製品化による革新」の2つの方向性が考えられるという。

 「新たなモノづくりプロセス」は、既存のモノづくりの仕組みを変えることで新たな製品を生み出せるようにするということだ。例えば、AI(人工知能)技術などを活用したジェネレーティブデザインや、3Dプリンティングなどの積層造形技術(Additive Manufacturing)を組み合わせることで、従来の設計者の発想を超えた製品を作り出せる可能性が生まれている。

 一方の「スマートコネクテッド製品化」は、製品がIoT(モノのインターネット)により常にインターネットに接続しその通信を利用してさまざまなサービスを享受できるようになることだ。例えば、スマートコネクテッドデバイス製品は、製品販売後もデバイスを通じて、製品の稼働状況データが収集できる。こうしたデータを分析して次期バージョンの開発に反映させられれば、継続的な製品の改善につながる。さらに「サービスモデルのイノベーション」にもつなげることができる。

 「サービスモデルのイノベーション」は、このスマートコネクテッドプロダクトが普及した後を想定したものだ。スマートコネクテッドプロダクトが普及すれば、企業は「製品の売り切り」から「製品が提供する価値のサービス化」にビジネスモデルをシフトさせることができる。つまり「モノ」を販売するビジネスモデルから「コト」を中心としたサービスモデルへ転換を図るということだ。

 さらに「ビジネスモデルのイノベーション」はこのサービスモデル化を組み合わせて進化させたものということになる。実際、こうした取り組みは急速に広がっている。英国ロールス・ロイスでは、自社が製造する航空機エンジンの販売ではなく、航空機エンジンの利用に応じて課金する従量課金サービスに舵を切った。航空機エンジンにセンサーを取り付け、センサーから収集したデータを基にエンジン出力と稼働時間を計算して課金するビジネスモデルである。これによりロールス・ロイスは、自社製品の稼働データを収集して製品の改善を図ると同時に、収益性の高いサービスモデルへのシフトに成功した。

 また、ブリヂストンでは、業務用タイヤにおいて、タイヤの販売という売り切りモデルから「新製品+リトレッド(表面ゴムの張り替え)+メンテナンス」を組み合わせた「トータルパッケージ」を用意し、タイヤという製品を販売するのではなく移動や輸送に必要な分のタイヤをサービスとして提供する方向にシフトした。

 「ロールス・ロイスもブリヂストンも『Microsoft Azure』をはじめさまざまなマイクロソフトのテクノロジーポートフォリオを活用してそれぞれのイノベーションを実現しています。両社とも自社製品の優位性を生かしつつデジタル技術を活用してイノベーションを推進したという点が重要だと考えます。われわれはこうした成功者の事例の共有なども含めて製造業全体のDXを支援していきたいと考えています」(アルカン氏)

デジタル化によるオペレーション最適化

 3つ目のキートピックは、デジタル化によるオペレーションの最適化だ。製造業にとってオペレーションの最適化は長年の重要課題であり、既にさまざまな技術やツールが存在している。しかし、オペレーションの末端までデジタル技術が入り込むことで従来は難しかった圧倒的な効率化や最適化が実現できるようになる。その中でマイクロソフトがオペレーション最適化の実現に向けて取り組んでいるのが「Factory of the Future(未来の工場、スマートファクトリー化)」と「インテリジェントサプライチェーン」だ。

 マイクロソフトはソフトウェア企業のイメージが強いが、実はマウスやキーボードをはじめ「Microsoft Surface」など自社ブランド製品を製造する「製造業」でもある。アルカン氏は「製造業としてマイクロソフト自身もさまざまな学びを進めています」と語る。いくら最新技術を導入すればオペレーションの最適化が図れるといっても既存の資産を全て破棄し、最初から新工場を構築するのは現実的ではない。IoTを導入してデータストリーミングやデータ収集、OTシステムへ新機能を追加する場合には、段階的な導入と既存システムとの連携が不可欠だ。そのためマイクロソフトでは、さまざまな企業や標準化団体と連携しながら、現実的なスマート工場の構築の支援を進めているという。

 一方「インテリジェント サプライチェーン」は、IoTやネットワーク、クラウド、AI(人工知能)といった先進デジタル技術を使用した柔軟なサプライチェーンの仕組みを指す。これを実現するには、データやプロセスの処理の流れをデジタル化して、サプライヤーが情報の流れを共有できる「デジタルスレッド」の仕組みが不可欠だ。デジタルスレッドの利点は、各サプライヤーの経営層から現場担当者までが共通の情報をリアルタイムで共有できることだ。例えば、製品納入を待っている販売担当は、製品の出荷状況をリアルタイムで把握できる。もし悪天候による遅延が発生した場合には、どのようなルート変更が最善なのかを示すことができる。データに基づいてビジネスの状況を鳥瞰的に把握することで、コスト削減や顧客満足度の向上にも貢献するというわけだ。

 アルカン氏は「Factory of the Futureに関しては日本でも積極的な取り組みが進んでいます。一方でインテリジェントサプライチェーンについては始まったばかりですが、急速に広がっています。今はデータをシームレスに共有して分析し、予測による問題回避の判断ができるフェーズに進んでいます。われわれは現在のフェーズを『コグニティブ フェーズ』と呼び、価値を訴求しています」と語っている。

持続可能な環境の構築

 キートピックの4つ目が「サスティナビリティ――持続可能な環境の構築」である。マイクロソフトは最新技術とインテリジェンスを組み合わせ、エネルギーの効率化や二酸化炭素排出の削減を、関連するパートナー企業や規制当局、政府組織と連携して取り組んでいる。

 SDGs(持続可能な開発目標)やESG(環境、社会、ガバナンス)経営などが大きく注目を集める中、企業として持続可能性への対応は必須となりつつある。特に製造業はモノづくりの過程で多くの物質を使用し、エネルギーを消費することで、国や地域の規制の対象とされるケース多い。こうしたグローバルのさまざまな規制に対して、適切に対応していくことが求められるわけだが、「製造業としての事業に最適な形で環境対応を取り入れていく。そういう支援を進めていきます」とアルカン氏は述べる。

photo マイクロソフトによる製造業への支援(クリックで拡大)出典:マイクロソフト

4つのトピックの前提としてマイクロソフトが約束していること

 ここまで製造業のDXにおける4つのトピックについて紹介してきたが、実はこれらの前提として、マイクロソフトが全ての土台となる「信頼のフレームワーク」として約束しているのが「サイバーセキュリティ」「透明性(トランスペアレンシー)」「データプライバシー」「コンプライアンス」の4つの点である。

 サイバーセキュリティでは、2015年にグローバルでセキュリティ体制を統括する組織「Cyber Defense Operations Center(CDOC)」を設立し、提供するサービス状況のモニタリングを24時間365日体制で実施している。ちなみにセキュリティ投資額は、1年間で10億ドルを超えるという。さらに、セキュリティを1つの機能として製品に組み込む「ビルドイン」のアプローチにより、製品の安全性を高めている。

 データプライバシーについては「顧客のもの」という姿勢を明確に打ち出す。アルカン氏は「マイクロソフトでは『データは顧客のもの』というのを明示している。顧客データを活用してマネタイズしたり、顧客の許可なく第三者へデータを開示したりすることは絶対にありません。われわれはテクノロジーの支援者であり、データを使ったプラットフォーマーになるつもりはないのです」と断言する

 さらにもう1つ、マイクロソフトの強みとして挙げられるのが「オープンでエコシステムが確立されている」ことだ。例えば、マイクロソフトのIoTについてのほとんどの技術要素がソフトウェア開発プラットフォームである「GitHub」で公開されている。顧客は自社のデータをAzure上でもオンプレミス環境でもハイブリッドで管理や運用できる。「マイクロソフトはオープンプラットフォームを支持しています。データやシステムをロックインすることはまったくありません」(アルカン氏)。

「顧客とともに」を徹底

 アルカン氏は「この5年間でマイクロソフトの企業文化も大きく変わりました。5年前までは『Know it all(全てを知っている)』という強気の姿勢でさまざまな提案を進めてきました。しかし、現在は『Learn it all(市場や顧客と一緒に学ぶ)』という姿勢を貫いています。顧客と一緒に学び、一緒に新たな価値や新たなビジネスを作り出していくのです。こうした取り組みの1つ1つが、顧客から支持される礎になっていると自負しています」と強く訴えている。

 こうしたマイクロソフトの姿勢について、アルカン氏は「マイクロソフトが描いているのは、全ての技術の『ホーム』のような存在です。マイクロソフトを経由してユーザーが最適な技術を選択し、活用し、ビジネスで成功するというのが、目指す姿です」と語る。

 マイクロソフトの豊富なテクノロジーポートフォリオがグローバルの多くの製造業から支持を受けているのは事実だが、その前提となる「企業姿勢」についても高く評価を受けている点は知っておいてもよいのではないだろうか。

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提供:日本マイクロソフト株式会社
アイティメディア営業企画/制作:MONOist 編集部/掲載内容有効期限:2019年12月24日