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» 2017年10月18日 10時00分 公開

VR技術入門:欲しいVRは自分で作れる! モノづくりのための Stingray VR 入門

今、非常に注目されているVR(Virtual Reality)だが、ゲームやエンタテインメントでの活用は急速に進んでいるものの、モノづくりへの応用においてはまだノウハウが少ない。本稿では、まだVRになじみの浅い製造業系エンジニアに向けて、まず技術の概要を分かりやすく説明し、3DデータからVRコンテンツを制作するAutodeskのゲームエンジン「Stingray」の概要について紹介する。

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 最近、製造業においてVR(Virtual Reality)導入の試みが進んでいる。大手企業が大掛かりなVRシステムを導入している例もあるが、3D CADを用いる設計現場レベルでは「まず試してみたい」というには予算的なハードルが高い。予算の承認期間が数カ月から1年に及ぶようでは手軽に試すこともできない。

 設計現場で手軽に試す方法の1つとして、ゲームエンジンを用いて自分で3D設計モデルのVRを作ってみるという方法がある。ツールの例としては、Autodeskのゲームエンジン「Stingray」が挙げられる。Stingrayは3DモデルからVRコンテンツが簡単な操作で作成できる。うまく使えば費用ゼロで、新たなハードウェアがなくてもVRを疑似体験することも可能だ。

 今回は、製造業エンジニアにとってはあまりなじみのないVR技術について分かりやすく解説するとともに、Stingrayによるコンテンツ作成について紹介する。

VRの基礎知識

 Stingrayの説明に入る前に、まずVRの基礎知識について説明する。VR、AR、MRについては、おおよそ以下のように理解されている。これらの定義は実際あいまいで立場によって異なる場合があるが、重要なのは各ハードウェアの「特徴を理解すること」である。

  • VR(Virtual Reality):「仮想的な現実感」の意。映像を頭の動きに追従させることで現実感が得られる。ヘッドマウントディスプレイ(HMD)は「Oculus Rift」「HTC Vive」など。
  • AR(Augmented Reality):「拡張現実感」の意。現実空間の視界に、文字や画像などの現実空間を説明する情報やCGを付加する技術。スマートフォンアプリの他、Google Tango対応のASUS ZenFone ARでは非常に高度なARが体験できる。※ZenFone ARは「AR」とついているものの、もはやMRである。
  • MR(Mixed Reality):「複合現実感」の意。現実空間に本来そこにはない仮想の3Dモデルを登場させ、なおかつ現実空間の3D形状をセンサーやカメラの動きから取得して仮想の3D形状と一致させる技術。HMDは「MREAL」や「Hololens」など。

VR、AR、MRの概要(出典:デジプロ研)

VRヘッドマウントディスプレイ(HMD)、HTC Viveの説明(出典:デジプロ研)

 HMDやコントローラーには6自由度のものと3自由度のものがある。6自由度であれば位置と角度を使用することが可能だ。3自由度では、角度のみ使用できる。位置の取得方式には、「インサイドアウト方式」と「アウトサイドイン方式」が存在する。

HMDやコントローラーの自由度(出典:デジプロ研)

 アウトサイドインは、HMDの外に置いたカメラがHMDやコントローラーの位置と角度を取得する方式である。カメラの台数が少ないと自分の体や他人に遮られて位置が取得できなくなる他、複数人利用が想定されていないものも多い。

「インサイドアウト方式」と「アウトサイドイン方式」の概要(出典:デジプロ研)

 インサイドアウトはHMDに搭載したカメラやセンサーなどで外部空間との位置関係を取得する方法である。ステレオカメラや深度センサーで外部空間の形状を記憶した上で自身の位置を割り出す方法もあれば、外部からの赤外線入射の時間差から位置を割り出す方法など、ハードウェアごとに全く異なる方法が並ぶ。

 HMDの軽さやトラッキング精度、外部に装置が必要かどうかは気になる要素であるが、上記の2分類が即これらの特性とは結び付かないのが複雑なところだ。しかし、まずこの2分類を意識することが各ハードウェアの特徴を理解するのに非常に重要である。

VRコンテンツ作成とStingray

 以上のように、ある程度ハードの特徴を理解すると、VRで「できること」が見えてくる。その上でやりたいことを整理してみるとよい。その後、さらにもう一度冷静になって「ほんとにそれ要る?」という視点で再検討してみてほしい。これによってハードウェア選定やVRコンテンツの作成は非常に楽になる可能性が高い。エンジニアであれば、現実的なコストと実質的な効果を意識したバランス感覚も必要だ。

できることとやりたいことを明確に!(出典:デジプロ研)

 VRはある程度のサイズ(おおむね人間大)以上のプロダクトの検討に向いている。例えば、リモコンや電動工具のように手に持てる大きさのプロダクトの場合、VRよりも3Dプリンタでモックを作る方がよいだろう。一方、自動車や生産設備、遊具や建築物など、プロダクトが大きくなればなるほどVR向きといえる。

 通常の高品質なVRコンテンツ作成の流れは以下の図のようになる。

通常のVRコンテンツ作成の流れ(出典:デジプロ研)

 「DCCツール」とは「Digital Content Creationツール」の略で、「3ds Max」や「Maya」などのツールを指す。VRコンテンツを見るためには.fbx形式のファイルが必要となるが、DCCツールはCADデータを.fbx形式へ変換するのに必要となる。製造業VRにおいては、きれいな外観を持ったモデルが必要でなければ、.fbx形式で出力できればどんなツールでも良い。なお、「Fusion 360」や「Navisworks」で.fbxを出力できる。

 通常のVRコンテンツ作成の流れはとても道のりが長い。質の高い自由なVRコンテンツが可能な反面、図の「?」マークの数だけソフトやワークフローの選定が必要になり、最適なフローはとても一朝一夕で構築できるものではない。まずは手持ちのツールや無料のツールでひとまずゴールまで行ってみることが重要だ。

 そのために、DCCツールもゲームエンジンも使わずに3DモデルをVR化できるツールもある。

  • Symmetry Alpha:無料。ファイル形式はSketchUp形式(.skp)のみ対応
  • PiXYZ Review:利用料は年間26万円。主要CADフォーマットに対応
  • Autodesk LIVE:利用料は年間4万1千円。Revitから2クリックでVRを見られる。日照シミュレーションあり。Stingrayデータが生成される
  • VRED Professional:利用料は年間185万円。自動車用3Dビジュアライゼーションソフト

 他のタイプのVRとして、別途起動したCADのOpenGL形状データを横取りしてVR表示させるシステムも存在する。この方式はデータを変換する手間が一切ない半面、モデルを持つことやアクションを設定することはできない。また、CADはOpenGL系に限定される。

Stingrayの操作について

 Stingrayでは最初からVRテンプレートが用意されており、これを選ぶだけで、VRを簡単に作成できる。

Stingrayによるコンテンツ作成(出典:デジプロ研)

 手軽なVR化ツールに対して、Stingrayなどのゲームエンジンを使用するメリットは、読み込んだ3Dモデルを持ったり動かしたり、ぶつかったり落としたりといったアクションを自由に設定することができる点である。製造業では製品のメンテナンス性の確認などの用途で使用したい要素だ。

レベルビューポート(出典:デジプロ研)

 プログラミング画面は、命令を線でつないでいくビジュアルプログラミングになっていて、コーディング無しにアクションを設定できる。

レベルフロー(出典:デジプロ研)

 デモで動かしたこのコンテンツはHMDなしでもキーボードのキーで空間を移動する。ZキーでHTC Viveのコントローラーを持って、テーブル上のボールやブロックを触ることができる。コントローラーに接触したブロックは音を立てて床に落ちる。このように、Stingrayはテンプレートを開いてたった数個のノードを追加するだけでHMDなしでVRコンテンツが動作する。

 しかも個人・スタートアップは無料、売り上げ1億円以上の企業でも月4320円で使用できる。

 HMDはないが買ってもらうためにVRコンテンツを動かしたい。手軽なVR化ツールではできないアクションを追加したいという方には、是非Stingrayを試していただきたい。


 本稿は2017年9月22日に開催した「Autodesk University Japan」において、デジプロ研 代表で、AUGIjpに所属し、「Inventor & Fusion 360 勉強会」などを取り仕切る太田明氏が講演した「製造業エンジニアのための Stingray VR 入門」の内容に基づき、構成・執筆した。

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提供:SCSK株式会社
アイティメディア営業企画/制作:MONOist 編集部/掲載内容有効期限:2017年11月17日

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